925 名前: ◆KMIdNZG7Hs 投稿日: 2008/12/25(木) 04:09:41.78 ID:hDa1nKgo
『涼宮ハルヒの悪夢』
俺はドーム型の広いホールにいる。整然と並んでいる椅子の群れは映画館を思わせるがスクリーンがどこかにあるわけじゃない。
右を向いている椅子はこちら側、左を向いている椅子はあちら側と向きによって群れて並んでいる。
何箇所かある出入り口は大きく開け放たれており人の出入りは多い。ホールの中央にある売店にはそれなりにお客が見える。
俺は近くにあった適当な椅子に座る。そうか地下に入場無料の温泉があるんだなと思う。
…
目覚ましの音で目が覚めた。見慣れた俺の部屋の天井が目に入る。
なんだこりゃ?
妙に明確に夢を覚えていると思いきや心象風景を切り取ったような動きの無い、まるで新聞記事のような夢の記憶に首をかしげる。
目覚めは良かったのだが、気分は複雑だ。なぜだろう、自分の思考をいまだに夢の中に置いてきたような気がする。
なぜか重要な夢のような気はするのに考えてみても別に大したことの無い内容にしか思えない。
うーん、ま、たまにはこんな夢も見るだろうよ。
俺は深く沈殿しそうになっていた思考を切り上げてベットから勢いをつけて起き上がった。
見慣れた自分の部屋で体に染み付いた動作で制服に着替える。
「キョンくん、おっはよー!」
ノックもせずに妹が部屋のドアを開けて駆け込んできた。
「おきてるー!」
目覚ましで目を覚ます事が珍しいみたいな目で見るな。
俺は新技がとかぶつぶつ言ってる妹の頭をこづいて洗面所に向かった。
926 名前: ◆KMIdNZG7Hs 投稿日: 2008/12/25(木) 04:10:20.60 ID:hDa1nKgo
毎度毎度のハイキングコースにうんざりしながらも、ぎりぎりホームルームに間に合う時間に校門をくぐる。
おお平穏なる日常。俺はいつもなら嫌気のさす、いつもどおりな日常に少しばかり嬉しさがこみ上げる。
先週エラー吸血鬼と死闘を繰り広げてようやく平穏無事な日々が戻ってきたんだ。命のやり取りなんて金輪際ごめんこうむる。
さて、ハルヒの前で口を滑らせないように気をつけなければな。
過去の自分を呪いながらも俺は自戒をきつく肝に銘じ、教室のドアを開けた。
ハルヒのアクビが目に入った。
「よう、どうしたんだ」自分の椅子に横向きに座りながら我らが団長殿に話しかけてみる。
「何がよ?」いきなりつっかかってきやがった。
「寝不足みたいだな」思ったままを言ったのだが…。
「…」
むすっと黙り込んでにらまれた。
「そうよ、寝不足よ」何だったんだ今の無言の圧力は?えーっと、俺なにか気に障るような事言ったっけか?
ま、ハルヒの不機嫌の原因なんてどうせろくでもないものに決まってる。
非日常との邂逅を常に待ちわびているハルヒと違ってとりあえず俺はここしばらくは日常という安息の時間を満喫したい。
俺は少し肩をすくめ前を向き、ちょうど教室に入ってきた岡部の顔を眺めた。
「傷はもう平気なのか?」
放課後になりいつものごとく古泉とボードゲームに興じている時に小声でたずねてみた。
「ええ、もう大丈夫ですよ。熊の肉をご馳走になったのが効いたのですかね?」
えーっと笑わせようとしているのか?面白くないぞ。ま、とにかくそらようござんした。
俺の心の清涼剤、メイド服の朝比奈さんが湯気が上がる湯飲みをことりことりと俺と古泉の前においてくれた。
「どうぞ」にっこり。後光がさして見えます。
うーむ、眼福眼福。ありがたく頂戴いたします。
喉を潤し窓の外をながめる。
流れる雲の下でパンクした車の屋根に寝っ転がりつぶやきたい。
…平和だねぇ。
ハルヒが朝から不機嫌な顔をしているがそれは見ないことにする。
いつものごとくなんの集まりだかわからない時間を過ごして今日も長門が本を閉じた。
パタン。
927 名前: ◆KMIdNZG7Hs 投稿日: 2008/12/25(木) 04:12:10.50 ID:hDa1nKgo
帰り道、古泉に聞いてみた。
「ハルヒの機嫌が悪いんだが心当たりはあるか?」
「いいえ」きょとんとした顔で返された。
「このところ閉鎖空間も発生してませんし、合宿からこちら涼宮さんの精神はいたって平穏ですよ」
…何となく納得できないものがどこかにひっかかるがハルヒの精神鑑定なんて面倒くさい役割は古泉に丸投げだ。
ハルヒがおとなしいならそれに越したことは無い。あいつが何か思いつくたびに右往左往して東奔西走して七転八倒してあげくのはてに死にそうになるのはもうごめんだぜ。
しかしそんな俺の思惑の斜め上を常にすっとんでゆくのが涼宮ハルヒの涼宮ハルヒたるゆえんであり、後で思い返せば俺たちはこのとき既にハルヒの次なる行動に巻き込まれていたのだった。
やれやれ、少しは安寧の心持とやらを味あわせてくれよ…。
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俺はホールの椅子に座りながら周囲を歩き回る人物を見るとも無く眺めていた。
それぞれの人物の顔に視線をあわせるとぼやけて性別年齢不詳になる。
視線を外すとはっきり見えてる気がするのだが意識するとするりと焦点から逃げる。
だがそんな事は不思議にも思わず俺はぼんやりと椅子に座って誰かを待っていた。
しばらくすると俺の横にだれかが立った。見上げて顔を見ても相変わらず顔は定まらない。
しかし俺はそいつが誰だか分かった。
「なぜお前がここにいる?!」俺の体が瞬時に緊張する。
相手はくすっとにこやかに笑う気配を身にまとう。
「--宮ハル----。----夢-----気をつ-----」俺の耳というか意識が聞き取りを拒否しているのか相手が何を言っているのか分からない。
くるりと俺に背を向けてホールの外に出て行った。
背中のほうから猛烈に存在感を持つ人物が近づいてくる気配がした。こんな存在感のあるヤツは俺の知り合いでただ一人。
そいつの名前は涼みy「いたー!!!!」
走りこんできたハルヒが俺にとび蹴りを食らわした。ずさーっと顔面をすりむきながら床をすべる。
「なにしやがる!」数メートル先で起き上がり怒鳴りつける。
「おっそいわよ!探し回って3回も温泉はいっちゃったわ!」
知るかそんな事。お前の都合に俺を合わすな。
と言おうとしたところでハルヒが俺の都合を気にするわけでもなくいつもどおりのハルヒの傍若無人な行動にささやかな抵抗としてため息をついた。
いつもの駅前の集合でもあるまいにハルヒの後ろには朝比奈さん、長門、古泉の三人がいつもの見慣れた表情で立っていた。
「罰金!!!!」
928 名前: ◆KMIdNZG7Hs 投稿日: 2008/12/25(木) 04:12:37.94 ID:hDa1nKgo
声も高らかにハルヒが俺の鼻先に人差し指をビシッと突きつけた。
「待ち合わせるなんて聞いてないぞ」
「他の団員を見なさい!既に全員そろっているわ!」
そいつらは俺とは違って特殊プロフィールの持ち主たちなんだ。完全無欠の一般高校生のお墨付きを古泉からもらった俺と一緒にするなよな。
と、毎度の事ながら言えるわけもなく、俺は仕方なく再びため息をついた。
「さっ!キョンのおごりで何か買いましょう!」ハルヒがまぶしいほどの笑顔を見せながら売店に向かって歩き出した。
ふーんだ、もう慣れたわい。
「キョン君いつもごめんなさい」朝比奈さんが俺の隣にとととと走りよってきて申し訳なさそうに頭を下げた。
いやいやいや、朝比奈さんの口に入るものを買うのなら俺の財布はとことんゆるくなりますから、そう、まるで孫を前にした「いいのよ、みくるちゃん、これは罰金なんだから!」
ハルヒが勝ち誇った顔を俺の目の前に突き出して言い切った。
目の前にあるハルヒの顔をしみじみと眺めて思う。
うーん、ツラはいいんだがな…。
何を思ったのかハルヒが突然一歩下がってふくれた。
目線を外してぼそっと「罰金なんだから…」
へいへいわかってますよ。
「多分、お分かりになってないと思いますよ」
後ろから古泉が俺にささやいてきた。
このやろう、なんかむかつくぜ。
売店で適当な飲み物を買い全員が飲み終わるのを見るや否やハルヒが高らかに言い放った。
「出発するわよ!」
心の底から叫びたい、どこに?
977 名前: ◆KMIdNZG7Hs 投稿日: 2009/02/07(土) 05:00:05.76 ID:2462y36o
意気揚々と歩き出したハルヒの後ろ姿を見ながら俺はもう一度深くため息をついて歩き出した。
「さて、どこに向かうのか楽しみですね。」
古泉が嬉しそうに隣を歩きながら耳打ちしてきた。
楽しくない、楽しくないぞ。絶対に俺が喜ぶような事態になるはずがない。
しかし、それでも俺はハルヒがSOS団の面子をどこに連れてゆくのかわずかながらにも期待していた。
が、ホールの扉をくぐってみると目の前に広がるのは見慣れた駅前の雑踏。
少し残念な気持ちを持ちながらも後ろを振り返ってみるとなんといつもの喫茶店の出入り口があった。
どう考えてもホールの扉と喫茶店の出入り口の寸法には差がありすぎだろう。
しかし夢ならこれもありか。
!
あ、そうかこれは夢だったんだ。
俺がそう認識した途端、世界がぼんやりとかすんだ。
ハルヒが高らかに何かを言っているが認識できない。辛うじて声の主がハルヒだと識別できる程度だ。
「おい」
俺が古泉に問いかけると古泉が振り向いたが、既にその顔は周囲の顔と判別がつかない。
古泉が返事をしているが俺にはもはや古泉の声としかわからない。
俺が古泉だと認識ているゆえにこいつは古泉として存在しているかのようだ。
朝比奈さんと思われる可憐な姿が近づいてきて心配そうな仕草をする。
綺麗なものはぼやけても綺麗なんですね。
多分長門の影だと思われる人物が直立不動でこっちを見ているのがわかる。
そして俺は…
目が覚めた。
…あー、二晩続きものの夢か。
もっと幼少の頃はこういう続きものの夢は見ていたような気がするが高校生にもなって再び合間見ええるとは思わなかったな。
しかもハルヒがらみで、だ。
978 名前: ◆KMIdNZG7Hs 投稿日: 2009/02/07(土) 05:00:47.67 ID:2462y36o
横になったまま首だけ回らせて枕元の時計に目をやる。
げ! アラーム予定時刻より30分も早く目が覚めてしまった。
くそ、あと30分も惰眠を貪っていられたのに、あの夢のせいだ。
30分だけ寝て起きるなんて芸当は俺には無理だ、何より目がさえてしまっている。ええぃ畜生、起きるか。
俺は未練たっぷりにベットから起き上がり朝の支度を始めた。
洗面所で歯を磨いている時に「キョン君が蒸発したー!」と叫んで階段を駆け下りてきた妹を小突いたのは言うまでもない。
毎度毎度のハイキングコースである。
肉体に与えられる苦痛を軽減するには沈思黙考か無心に限る。
で、俺が考えているのは2日連続で見ている夢のことだ。
夢であることは間違いないのだが妙に現実じみている。特に気になるのは現実となにかしらの繋がりがあるような妙な実体感だ。
白昼夢の一言で片付けてしまってもいいものだろうか。片付けられれば一番なのだが。うむむむ。
いちばん嫌な予想はハルヒが何かしでかしてあの夢を見ているという可能性だ。
うーむ…。
よそう、やめ!今回の夢は明らかに夢。現実の俺に何か危機が迫るわけでもあるまい。
しばらくすれば記憶の底に埋没するだろう。
俺がそう結論付けて忘れようと決意したとき後ろから声がかかった。
「いよっ、変な顔しているぞ」薄く汗をかきながらもニヤケ面で谷口が話しかけてきた。
「なんだ変な顔っつーのは」後ろから声を掛けてきて変な顔もねえだろうに。
「涼宮に毒された顔っつーことだよ」うるせー。
この後、谷口のまたしても相手不在のデートコースの予定を聞かされながら教室に向かった。
こいつの話は頭をからっぽにして聞くに限る。おかげで坂道の苦痛が幾分和らいだ気がするぜ。
教室に入ると今日もハルヒのアクビが目に入った。
心なしか目つきもぼんやりしている気がする。
「おい、大丈夫か?」
机にぐだーと伸びながらハルヒが下から俺をにらみ付けた。
「何がよ」こいつは人に話しかけられるとけんか腰で返すのが癖なのかね?
「いやなんでもない」
谷口との馬鹿話で夢のことをすっかり忘れてしまっていた俺は教室に入ってきた岡部に向き直り会話を打ち切った。
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979 名前: ◆KMIdNZG7Hs 投稿日: 2009/02/07(土) 05:01:17.26 ID:2462y36o
放課後。
今日も今日とて何の集まりか分からない部活動をする。
部活動といっても言わずもがな、ハルヒはネットサーフィン、朝比奈さんはお茶汲みメイド、長門は読書、俺と古泉はボードゲームに興じている。
しかしなんだろうこの違和感。
違和感というよりも全員の覇気の無さ。いつもと変わらないと表現しても構わないのだけれども何か全員が疲れているような印象を受ける。
朝比奈さんがお盆で顔の半分を隠しながらあくびをした。
古泉があくびをかみ殺して目じりをぬぐった。
ハルヒは机に突っ伏しながらマウスをぐりぐり動かしている。
長門は…いつもと変わらないな。
これは、全員もしかして…寝不足?
夢との関連がすぐに思いついたが確かめるのになぜかためらう。
ストレートに古泉あたりに聞いてみるか?
「このところ続きものの夢を見てないか」と。
しかし俺のこの一言が何かの引き金になるという確信めいた予感が走った。
わけのわからんトラブルに巻き込まれるのはまだ嫌だぜ。
俺は頭の中で引き金に掛けた指を外して安全装置をかける。
なによりハルヒの前でのこの発言は文字通り世界を終わらせる可能性がある。気がする。
くわばらくわばら。
それに、まさか3日連続で見ることも無いだろう。
パタン。
長門が本を閉じた。
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いつもの帰り道、皆と別れてなんとなく携帯を取り出した。
タイミングを見計らったかのように鳴り出した。
『古泉一樹』
「なんだ?」
「いつもの公園に来ていただけますか」
悪い予感が段々と膨らんでくる。暗雲立ち込めるとはこのことだろう。
980 名前: ◆KMIdNZG7Hs 投稿日: 2009/02/07(土) 05:01:38.81 ID:2462y36o
この時点で古泉が振ってくる話題がほとんど読める。このところの夢のことに間違いない。
ハルヒめ今度はいったい何をやらかしたんだ?
公園につくとハルヒをのぞいたSOS団の面子がそろっていた。
「今みなさんと確認を取ったところです。聡明なあなたのことです何の確認かお分かりでしょう?」
「…毎晩見る夢のことだな」
「ご明察、そしてあなたに最終確認です」
「なんだ?」
「財布の中身をみてください」
…ぞっとした。
このところお金は使っていない。ただし夢の中でおごらされた以外は。
中身が俺の記憶している金額ならともかく、もし減ったいたら…。
恐る恐る財布を取り出し中身を確認する。
…中身は減っていた。
しかも計算してみたら夢の中で払った金額が消えていた。
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